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淫指~みどりの場合(1) 

春休みの土曜日の夕方、みどりが友達と見に行った映画から帰ってくると、リビングで言い争っている声が玄関まで聞こえた。
「みどり、お帰り」
「ただいま・・・お母様、またお兄様とお父様?」
みどりが小声で聞くと、母親が顔をしかめてうなずいた。みどりは二人の姿を見るのが嫌だったので、そのまま二階の自分の部屋に上がって行った。
(お兄様・・・)
みどりの兄は成績優秀で一流大学へも現役合格確実と思われていたのだが、つい先頃の入試で落ちてしまった。
それ以降、受験失敗を叱責する父とそれに反発する兄の間で言い争いが絶えなかった。
お嬢様学校として有名な私立白雪女子学園中学に通うみどりは、いつも笑顔でとても優しい兄のことが大好きで、兄が高二の時までは、よく一緒に遊びに行っていて、友達からは「ブラコン」とからかわれていたほどだった。
でも大学に落ち父と口論が絶えなくなってからは、兄から笑顔が消え無口になってしまい、みどりは寂しい思いをしていた。

新学期になった。みどりは中等部の三年に進級した。普通なら受験の年なのだが、大学までエスカレーター式の白雪に通うみどりには無縁の話でいつもと変わらない朝だった。
みどりの家では、父はどれだけ忙しくても朝食は家でとる。以前は、慌ただしいながらも談笑の絶えない楽しい時間だったが、今はただただ重苦しい雰囲気の中、皆無言でトーストを頬張っていた。
「ごちそうさまでした、それじゃあ、学校に行ってきます」
と言いながら、みどりが席を立とうとすると、兄が、
「みどり、ちょっと待って、一緒に行こう」
と言った。みどりは一瞬小首を傾げたが、すぐにみどりの通う白雪と兄がこの春から通うことになった予備校が途中まで同じ路線にあることに気付いた。今までずっと違う方向にある学校に通っていたので別々の駅を使っていた。兄と一緒に通学するのは初めてだったのだ。
みどりにとっては大好きな兄と一緒なのは楽しいし、兄が一緒なら満員電車で痴漢されることもなくなるだろう。願っても無いことだった。みどりは、ニッコリとすると、
「はーい」
と言った。だが、なぜかふと妙な胸騒ぎを感じていた。

【その2へ続く】


[2010/02/05 06:00] 淫指~みどりの場合 | トラックバック(-) | コメント(-)