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ハイキング~ゆりかの場合(1) 

「本当にありがとうございます」
「いや、良かったよ。女の子の泣き声がした時には、初めは空耳かなと思ったけど」
百合香はホッとしていた。
妹の百合奈も安心したのか泣き止んで痛めた足を男たちの一人に見てもらっていた。

百合香と百合奈の姉妹は父母に連れられてハイキングに来ていた。
標高はそこそこあるが、登山道は整備されており、小中学生が登るには手頃なコースだった。
頂上に着き食事をした後、下りの途中、休憩を取った時に、姉妹は近くのお花畑を見に行った。
その後、両親のところに戻ろうとしたが、途中で道に迷ってしまったのだ。
しかも、気の小さい泣き虫の妹・百合奈があわてて駆け出して足をくじいてしまい動くことができなくなってしまった。
不安になった百合奈が泣き出すのを勝気な姉・百合香もなだめきれず途方にくれていた。
そこに四人の男たちが探しに来てくれたのだ。

「この辺はコースから外れると、使わなくなって荒れた林道なんかがあって道に迷いやすいんだよ」
「そうなんですか」山慣れた格好の四人組の姿を見て、百合香はすっかり安心していた。
「この子、捻挫しているようだな」
「歩けそうか」
「いやぁ、これは無理だね」
百合奈は足をさすりなが痛そうな顔をしていた。
さすがに百合香も不安になった。そんな表情を見て、男たちの一人が、
「心配しなくても俺たちが交代で下までおぶっていってあげるから大丈夫だよ」
「本当にありがとうございます」「ありがとうございます」
百合香と百合奈の姉妹はペコリと頭を下げた。
一安心したところで、百合奈は草叢の方へ行こうとした。
「おいおい、歩き回ったりすると、また迷子になってしまうよ」
「ええ、でも、あのぉ」
モジモジしながらうつむく百合香の様子を見て、男たちは気付いた。
「ほー、お嬢ちゃん、オシッコか」
普段は勝気な百合香もさすがに声も出せなかった。
うつむいたまま、小さくうなずくのがやっとだった。
首まで真っ赤にした百合香を見て、男たちが目配せしあった。
それまでの親切そうな表情が一変していた。
痛めた足をさすりながら、石に腰掛けていた百合奈はその表情を見て脅えた。
「おい、お嬢ちゃん、このままじゃあ、あんたも妹も遭難して死んでしまうところだったんだぜ。
 命の恩人へ『お礼にオシッコしているところを見て下さい』ぐらいのこと言えないかなぁ」

【その2へつづく】

[2009/03/18 06:00] ハイキング~ゆりかの場合 | トラックバック(-) | コメント(-)