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従兄~かすみの場合(1) 

バレンタインデーの当日になった。
かすみにとっては待ちに待った日であったが、いざ当日となると、普段は人一倍おしゃべりなかすみでさえ、不安と緊張で喉がカラカラになっていた。
かといって、目の前のコーヒーに手をつける気にもならず、ただじっと待っていた。
「やあ、かすみちゃん、待たせたね」
「ううん、私が早く着き過ぎただけだから」
その通りだった。約束の時間には、まだ十分あった。
かすみが三十分も前に来ていただけのことだった。
従兄(いとこ)が向かい側に座った。

かすみは大事な告白の場所がファーストフードであることを、今更ながら後悔していた。
しかし、制服を着た中学三年生が待ち合わせに使える店はそう多くない。
「はい、これ、プレゼント」
有名店で買った超高級チョコレートを従兄に差し出した。
「ありがとう」
いつもクールな従兄は優しい微笑を浮かべ、チョコを受け取った。
女の子から「二月十四日に会いたい」というメールが来れば、バレンタインのチョコに決まっている。
従兄は何も驚いた様子はない。
従兄も大学三年生だ。おそらく大学でもたくさんチョコをもらっているに違いない。
かすみは従兄にはっきり言わなければならなかった。
「あのぉ、お兄様」
一人っ子のかすみは幼い時から従兄のことを「お兄様」と呼んでいた。
「ん?なんだい、かすみちゃん?」
「このチョコ、本気なんです。付き合って下さい」
かすみはまともに従兄の顔を見られなかった。
沈黙が続いた。その沈黙に耐えきれなくなったかすみが上目使いで従兄を見ると、いつも冷静な従兄が珍しく少し困惑しているようだった。
「かすみちゃん、本当に本気なのか?」

かすみは自分の思いをはっきりと伝えたかったが、うまく言葉にすることもできず、従兄の目を見ながら頷くのが、やっとだった。
「ここではなんだから、続きは僕の部屋で話そうか」
「はい」

【その2へ続く】

[2009/02/26 06:00] 従兄~かすみの場合 | トラックバック(-) | コメント(-)